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離婚・男女関係

離婚を考えるとき

縁あって結婚した夫婦が離婚を考えることになる原因は、さまざまです。また、それぞれの年齢、婚姻期間、子どもの有無や年齢、住宅ローンなどの負債も含めた資産状況もそれぞれ異なります。

離婚に踏み切るか否か、離婚の意思を固めたとして、いつそれを切り出すのか、どのような条件で離婚するか、相手方が離婚に応じない場合にどうしたらよいのか、逆に、離婚したくないのに相手方から離婚を求められた場合にどうしたらよいのか等を考えるにあたって、必ずしも法律問題とは言えないようなことを含めて、まずは、離婚についてのさまざまなケースを扱ってきている弁護士に相談することで、その後の人生を少しでも良い方向に向かわせるためのヒントが得られるはずです。

離婚協議、離婚調停は、弁護士が付くことなく行われることも多いですし、それが可能ですが、その都度その都度の判断が求められる場面で的確なアドヴァイスを得ることができ、また、精神的な負担も軽くなるなど、弁護士が付くことによるメリットは大きいものと考えています。

離婚の種類

離婚には、協議離婚、調停離婚、和解離婚、裁判離婚と審判離婚とがあります。

協議離婚

夫婦の話し合いで離婚をすることに双方が同意し、子どもがいる場合には、夫婦のどちらが離婚後に親権者になるかを決めることができれば、夫婦それぞれと証人2名が署名離婚届(押印はしなくてよいことになりました。)を役所に提出、受理してもらって、協議離婚を成立させることができます。
協議離婚は、離婚届が提出、受理されることによって成立しますので、離婚届に全部記入が終わっていても、提出、受理されない限り、離婚は成立しません。
したがって、離婚届に署名した後であっても、役所に「離婚届不受理申出」が出されていれば、離婚届は受理されず、離婚も成立しません。
不受理申出をした側がそれを取り下げない限りは、協議離婚はできませんので、離婚をするには、離婚調停の申立てをする必要が出てきます。

協議離婚の場合の養育費、面会交流、慰謝料、財産分与、年金分割

協議離婚をするに際して、養育費や面会交流、慰謝料、財産分与について、必ずしも合意ができている必要はありませんが、離婚慰謝料は離婚後3年以内、財産分与、年金分割は離婚後2年以内に請求する必要があります。
事情により、慰謝料や財産分与については決めず、また、お子さんがいる場合にも親権者だけを決めて、養育費や面会交流については決めずに離婚を先行させるということもありますが、養育費や面会交流、慰謝料、財産分与についてもあわせて協議して合意している場合が多いと思われます。
未成熟の子どもがおらず、離婚と同時に慰謝料や財産分与金が支払われる場合には、支払われない場合のことを考えておく必要はありませんが、離婚後に支払われることになるものがある場合には、支払を確保する方策をたてることになります。
協議離婚の場合に一般的に行われているのは、養育費、慰謝料、財産分与についての合意内容を、支払われない場合には強制執行をすることを認めるという強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくことです。
面会交流については、強制的に面会させるということはできません。 面会交流について合意ができない場合には、家庭裁判所の調停や審判を利用することになります。

調停離婚

離婚をしたいけれども、相手方がそれに応じてくれないという場合には、まず、家庭裁判所に離婚調停の申立てをする必要があります。
家庭裁判所では、中立的な立場の調停委員2名と裁判官1名の計3名が調停委員会を構成して、調停を進めていきます。
調停にいつも出席するのは2名の調停委員のみで、裁判官は、必要に応じて出席します。
通常は、調停委員が申立人と相手方のそれぞれから交互に話を聞き、合意の成立に向けて調停を進めていきます。申立人と相手方の双方が調停室に入って調停を行う同席調停というものもありますが、ごく例外的にしか行われていません。
DVを受けている場合などには、家庭裁判所にその旨を伝えることにより、調停の開始時刻や、待合室の場所についての配慮がなされます。
調停は、調停委員が間に入って話し合いを進めますので、ある程度冷静に話し合いを進めることができ、解決を困難にしている事情などについても明らかになっていくので、当事者同士で話し合うよりは、合意に向かいやすいと言えます。
しかし、調停は、あくまで話し合いで、調停委員会に裁判官が入っているといっても、調停委員会が結論を決めることはできません。ただし、養育費など、算定基準があるものについては、仮に調停で決められずに裁判所が審判で決めるとした場合には、このようになるという示唆がなされ、それに基づいて合意がなされるということはあります。
離婚調停においては、同時に、養育費、面会交流、慰謝料、財産分与、年金分割についてもあわせて話し合われることが多いです。 調停での話し合いを続けても合意に至ることができそうもないという場合には、調停は不成立となり、離婚を求める側は、審判になる場合を除き、離婚訴訟を起こすことになります。

審判離婚

実際に審判離婚となるケースは非常に少ないので、ここでの説明は省略しますが、調停での合意が成立しない場合であって、離婚自体の合意はできているけれども、離婚条件のごく一部の合意ができないような場合など、家庭裁判所が職権で「調停に代わる審判」(家事事件手続法第284条)をすることがあります。

家事事件手続法
(調停に代わる審判の対象及び要件)
第二百八十四条

  1. 家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。ただし、第二百七十七条第一項に規定する事項についての家事調停の手続においては、この限りでない。
  2. 家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、調停に代わる審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。
  3. 家庭裁判所は、調停に代わる審判において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。

裁判離婚・和解離婚

離婚調停が不成立になった場合、離婚するには離婚を求める側が、離婚訴訟を起こすことになります。離婚とあわせて、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割の請求をすることもできます。
離婚訴訟を起こすことができるのは、民法第770条に定められた離婚原因がある場合で、法律の文言上「次に掲げる場合に限り」となっていて、それだけを見ると、限られた場合にしか離婚訴訟を起こすことはできず、離婚は認められないかのようにも読めます。
しかし、裁判所の裁量の幅がとても広いですし、ケース毎に、事情も、証拠としてどのようなものがあるのかも異なるので、判決となっている例に照らしても、どのようなケースがこれにあたり、どのようなケースがあたらないのかを明確に示すことは実際には困難です。
離婚訴訟が提起された場合でも、判決には至らず、和解により解決し、和解離婚となっているものも相当数あります。
その中には、判決になるとすれば離婚は認められなかったであろうと思われるものもあるので、判決で離婚が認められる可能性が必ずしも高くはないものについても、離婚訴訟が起こされているケースも、相当数あるものと思われます。

(裁判上の離婚)
第七百七十条

  1. 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
    1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
    2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
    3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
    4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
    5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
  2. 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

協議離婚、調停離婚、審判離婚、和解離婚、裁判離婚の違い

  1. 離婚がいつ成立するか

    協議離婚離婚届が提出受理されたとき
    調停離婚調停が成立したとき
    審判離婚審判が確定したとき
    和解離婚和解が成立したとき
    裁判離婚離婚を認める判決が確定したとき 

    (家庭裁判所で離婚請求を認める判決が出されたとしても、控訴や上告があれば、判決は確定しないので、離婚にはならない。控訴棄却の判決確定、あるいは上告棄却の判決確定となって離婚が成立する)

  2. 離婚届の出し方

    協議離婚夫婦それぞれと証人2名が署名して、夫婦連名で出す。
    調停離婚調停成立後10日以内に、申立人(調停で相手方が届出をする旨を定める場合もある)が出す。
    審判離婚審判確定後10日以内に、申立人が出す。
    和解離婚和解成立後10日以内に、離婚訴訟を提起した者(和解で提起された者が届出する旨を定める場合もある)が出す。
    裁判離婚離婚の判決確定後10日以内に、離婚訴訟を提起した者が出す。

    調停離婚、審判離婚、和解離婚、裁判離婚の届出は、届出の時点ではいずれも離婚が既に成立しており、離婚が成立したということの届出なので、証人の署名も相手方の署名も不要です。

  3. 戸籍への記載のされ方

    協議離婚離婚届が出された日が「離婚日」として戸籍に載る
    調停離婚調停が成立した日が「離婚の調停成立日」として戸籍に載る
    審判離婚審判が確定した日が「離婚の審判確定日」として戸籍に載る
    和解離婚和解が成立した日が「離婚の和解成立日」として戸籍に載る
    裁判離婚裁判が確定した日が「離婚の裁判確定日」として戸籍に載る

このように、どのようなかたちで離婚したのかということが戸籍に載ることになるので、中には、離婚訴訟にまでなった場合でも、当事者双方が合意をして、離婚の成立については、協議離婚のかたちをとるというケースもあります。

財産分与について

財産分与は、夫婦が婚姻後に築いた財産を離婚に際して精算するものです。

  1. 財産分与の対象とならないもの(特有財産)
    婚姻前に築いた財産は財産分与の対象とならず、婚姻後に取得したものであっても、相続や贈与など婚姻生活とは無関係に取得した財産は、財産分与の対象とならないのが原則です。
    もっとも、婚姻前の財産と婚姻後に築いた財産とが渾然一体となってしまっていることも多く、婚姻期間が長くなればなるほど、婚姻前に築いた財産として特有財産であるとは認められにくくなる傾向があります。
    また、相続などにより取得した財産であっても、取得してから長期間が経過している場合などは、特有財産であることの証明が難しくなったり、不動産の場合には、その維持管理に対する配偶者の寄与が考慮されたりして、特有財産として認められる範囲が狭くなっていく傾向があります。
  2. 財産分与の基準時
    財産分与は、離婚に際して、婚姻後に築いた財産を精算するものですが、離婚が成立する前に既に夫婦が別居している場合には、別居時が基準となるのが通例です。
    ただし、別居はしていても、別居前と変わらずに経済的な協力関係が維持されている場合などには、必ずしも別居時が基準とならない場合もあります。

婚姻費用の分担請求

婚姻中に別居が開始し、経済的協力関係がなくなっている場合には、婚姻費用の分担請求をすることができます。
婚姻費用の分担を請求しても、相手方がこれに応じない場合には、家庭裁判所に婚姻費用の分担の調停を申立て、調停でも合意ができない場合には、審判に移行します。
婚姻費用分担の調停や審判で分担が認められるのは、婚姻費用を相手方に請求したときからのものについてで、別居後、婚姻費用の分担請求をする前のもの(過去の婚姻費用)についての請求は、財産分与の請求の中で行うことになります。

離婚のよくあるご相談事例

よく相談される典型的なケースをご紹介します。なお、回答はあくまで一例にすぎません。

夫が別の女性とつきあっていて、もう2年も別居中です。小学生と中学生の子どもがいます。夫からは別れてくれといわれています。離婚に応じたくはありませんが、裁判を起こされたら離婚が認められてしまうのでしょうか。また、女性に対して慰謝料を請求したいと思っていますが、離婚していなくても女性に慰謝料の請求をすることはできますか。
今は離婚する気持ちはありませんが、気持ちが変わって離婚に応じることにする場合、まだローンの返済中ですが、夫にローンを払ってもらって自宅の夫名義のマンションを私のものにするということはできないでしょうか。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

  1. 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
  2. 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

協議離婚に応じない場合、夫がどうしても離婚したければ、最終的には離婚を請求する裁判を起こしてくるでしょう。その場合であっても、いきなり裁判をすることはできません。まず、離婚の調停を申し立て、調停で話がつかなかった場合に初めて裁判を提起できます(調停前置主義といいます)。仮に調停が不調となり、裁判になったとしても、別の女性ができたことが原因で婚姻関係が破綻したという場合、夫の側に責任があるので(この場合の夫を有責配偶者といいます)、夫からの離婚請求は認められないケースが多いとはいえます。

長期間にわたる別居により婚姻生活が完全に形だけのものとなり、未成熟の子どもがいないなどの場合、裁判所が離婚を認めることもあります。あなたの場合は、別居後2年しかたっていないこと、未成熟の子どもがいることを考えると、裁判所が判決で離婚を認める可能性は低いと思います。

裁判所で話し合って離婚に応じる場合は、慰謝料や財産分与を離婚条件として提示することになります。また、子どもの養育費も請求できます。離婚条件として、ローンを夫に払わせてマンションの名義を変更させるということも、合意すれば可能です。また、あわせて子どもの養育費も決めることができます。現在、成年年齢は18歳になりましたが、18歳ではまだ経済的に自立していないことがほとんどですので、通常は20歳まで、合意をすれば、4年制大学に行くことを念頭に、22歳になる年の翌年(早生まれの場合には、22歳になる年)の3月までとすることもあります。

離婚していなくても、夫の交際相手の女性に対して、不貞についての慰謝料請求をすることができます。

ただし、不貞行為があったことと、その相手が誰であったかを知ったときから3年以内に請求しないと、時効にかかってしまいます。

一方、最終的に夫と離婚することとなり、そのときは既に夫が不貞行為を行ってから3年以上が経過していたとしても、不貞行為を含む夫の婚姻生活上の離婚せざるを得なくなってしまった行為について、離婚慰謝料として請求することは可能で、離婚した後も、離婚後3年間は時効にかかることはありません。

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