中小企業のニーズに応えるために

~弁護士業務センター委員長を終えて

小池 振一郎

2009年7月14日

 私は、第二東京弁護士会弁護士業務センター委員長として、昨年秋、東京三弁護士会と東京商工会議所との間で協定を締結し、弁護士会と中小企業との連携強化に踏み出した。

 「透明で公正な社会をつくる」という司法改革の理念を実現するためには、企業の中に、官庁や地方自治体の中に、弁護士をとり入れ、あるいは、弁護士と日常的に提携する体制を作る必要がある。

 なぜ弁護士が必要なのか。弁護士は依頼者のために相手方(刑事事件では検察官)とたたかう。裁判になれば、裁判官とたたかう。依頼者が組織人の場合は、その組織や関連団体に目配りしながら。依頼者が市民個人の場合でも、その依頼者の家族、職場などに目配りしながら。マスコミ対策も意識しながら。弁護士は複眼的思考を求められる職業なのだ。しかもそのたたかいは、法の趣旨に沿い、人権と正義に適うものでなければならず、そのための弁護士としての独立性を維持しなければならない。弁護士は依頼者のために、これらすべてを視野に入れながら、最もいい選択を求められる。

 そのため、依頼企業が、本当に法に基づき、かつ適正に運営されているかをチェックし、いざ不祥事が起ったときには、記者会見を含めリスクマネージメントを適切に行うために、どうしても弁護士が必要である。不祥事が起ったときの対応こそが、不祥事そのものよりも重要であるというのは、会社そのものが無くなった雪印食品などの教訓であろう。

 私は、ある地方の老舗企業の再生にかかわった。民事再生の「民間版」といわれる中小企業再生支援協議会の援助を受けた企業であった。依頼企業のメインバンク、子会社、関連会社、会長・社長とその親族、「社員」取締役、従業員、労働組合、債権者…これらすべての思い、利害を配慮しながら、最善の方針を選択する。しかも、地域再生、地域産業の活性化という中小企業再生支援協議会の理念を常に念頭に置きながら、対処した。

 弁護士は、依頼者に応じて、次は相手方と同様の立場にも立ち得るという意味で、互換性のある職業である。当事者双方の立場を理解することによって、早期に妥当な解決を図ることができる。

 だから、企業、官庁、地方自治体といった組織は、率先して弁護士を使った方がいい。ところが、弁護士はまだまだ中小企業のニーズに応えていない。

 契約書作成、債権回収、顧客クレーム対応などの商取引に関わる分野はもとより、労務管理など組織内部の問題の対処、中小企業においては、事業承継、高齢者財産管理、相続、遺言、離婚などの家族問題も絡む。倒産の恐れがある場合は、できるだけ早く弁護士に相談することによってどれだけ救済されるかわからない。事業再生できるか、瀬戸際の局面でもある。それは地域の活性化にもつながる。

 といっても、企業サイドが弁護士の使い方を知らないのだが、それは企業の側に責任があるというよりも、企業のニーズに応えていない弁護士、弁護士会の側の問題といえよう。

 いま、週三日は企業内で働き、あとの三日は自分の法律事務所で働くといった形態も出現している。

 法化社会の実現に向けて、各方面で知恵と力を出し合うことが求められている。